【最終更新日:2019年7月7日】

「ハイブリッドセラミック」という言葉をお聞きになったことがありますか?

2019年7月7日更新
執筆者:表参道歯科アールズクリニック 院長 田中良一

ハイブリッドセラミックというと、なんだか進化したセラミックのように聞こえますよね。
でも実は、ハイブリッドセラミックとはセラミックではなくてプラスチックなのです。

「セラミックの混じったプラスチック」「プラスチックで固めたセラミック」などと言う人もいますが、これは誇大表現です。

「ハイブリッドセラミック」「ハイブリッドレジン」「ダイレクトセラミク」などの呼ばれ方をしていますが、これらはすべてコンポジットレジンのことです。

コンポジットレジンとは樹脂(プラスチック)の一種で、多官能性メタクリレートという素材に無機質フィラー(砂つぶみたいなもの)を多く添加した樹脂です。

型取りをして模型の上で製作する方法(間接法)で使用されるものがハイブリッドセラミックと言われます。
これは、1990年代に間接法用にフィラーの含有量を増やして強度を上げたたコンポジットレジンを「エステニア」「アートグラス」などの商品名で各メーカーから発売した時に、従来のレジンと差別化しようとして商業的な目的でハイブリッドセラミックという名称が付けられたものです。

実際に厚生労働省に医療機器として認可されている分類を見ると、一般名称はセラミックではなく「歯冠用硬質レジン」に分類されています。
医療機器や医療材料に必ず添付されている「添付文書」で確認できます。
「エステニア」という製品の例を示すと、確かに「歯冠用硬質レジン」と書かれています。
参考文献:独立行政法人医薬品医療機器総合機構の医療機器情報検索結果より

専門的になりますが、成分は、モノマー(ウレタン系メタクリルモノマー、 メタクリル酸系モノマー) フィラー(表面処理ガラス粉、表面処 理アルミナ系マイクロフィラー) 光重合触媒、着色剤、その他
です。

ハイブリッドレジンという呼び方は主に口の中で歯に直接接着する方法(直接法)で使用するものに使われます。
これらは厚生労働省に認可されている分類では「歯科充填用コンポジットレジン」と分類されています。
メーカーによって添付文書の書き方に若干の違いがあるため、「エステニア」と同メーカーの「クリアフィルマジェスティ ES-2」の例を示すと「歯科充填用コンポジットレジン」と書かれています。
参考文献:独立行政法人医薬品医療機器総合機構の医療機器情報検索結果より

成分は、モノマー(Bis-GMA、その他のメタ クリル酸系モノマー) フィラー(表面処理ガラス粉、表面 処理有機複合フィラー) 光重合触媒、着色剤

ほぼ同じ成分だということがお分かりいただけましたでしょうか。

ちなみに、「ダイレクトセラミック」は一部の歯科医院が勝手にそう言っているだけで専門用語ではありませんが、これもコンポジットレジンのことです。

「ダイレクトボンディング」とは、型取りをしないで歯に直接、接着剤でコンポジットレジンを充填して歯の形態を回復する手法のことです。

料理に例えるなら、
コンポジットレジンが素材で、ダイレクトボンディングが調理法の名前です。
コンポジットレジンが「魚」だとすると
ダイレクトボンディングが「焼く」「煮る」「握る」
どちらも同じ魚ということです。

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