「食後30分は歯を磨いてはいけない」というのが間違いという理由は?

【最終更新日:2019年8月12日】

食後30分は歯を磨いてはいけない?

「歯磨きは食後すぐが良いのか?それとも30分後が良いのか?」という質問がありました。
ネットで「食後30分は歯を磨いてはいけない!」といった記事を見られたそうです。
検索してみると、たしかにそのような記事がたくさん出てきました。
結論から言うと、
「普通の人」が「食後30分は歯を磨いてはいけない」というのは、間違いです。

食後すぐに歯を磨いてはいけない説が広まった理由

「食後すぐに歯を磨いてはいけない」という説は、
2006年頃からTVのバラエティ番組などが取り上げるようになり
2010年にNHKの番組で放送された内容が、断片的に拡散していったようです。
番組で紹介された内容は

歯の表面はエナメル質で覆われている。
歯の食いしばりなどにより、エナメル質が削られると象牙質が露出する。
さらに象牙質は酸に弱いため、酸性のものが含まれる食事をとった後すぐに歯を磨くと削れてしまう可能性がある。だから、食後のすぐの歯磨きは控えたほうが良い。

といったものです。
ここで大事なのは「象牙質が露出している」「酸性のものが含まれる食事をとった後」という前提があることなのですが、
「食後のすぐの歯磨きは控えたほうが良い」という部分だけが広まってしまったようです。

食後すぐに歯を磨いてはいけない説の根拠

報道された「象牙質が露出している」人は、「酸性のものが含まれる食事をとった後」「食後すぐに歯を磨いてはいけない」という説は何を根拠にしているかを調べてみると、
2004年に”Caries Research”に発表された”Brushing abrasion of softened and remineralised dentin: an in situ study.”という論文です。
この論文では次のような実験をしています。
ヒトの歯の象牙質の標本を、1日2回90秒間、口の外で炭酸飲料のスプライト・ライトに浸けて脱灰させ柔らかくします。それを被験者の口の中に装置を介して取り付けます。被験者をグループ分けして、装着後異なった時間間隔でブラッシングします。(直後、10分後、20分後、30分後、60分後、ブラッシングしない)
実験の結果は、 直後、10分後、20分後のグループでは、顕著に象牙質が削られていました。30分後、60分後のグループでは、ブラッシングをしないグループと大差はありませんでした。
論文では、実験結果から「象牙質の表面を守るためには、歯を溶かすような侵襲を受けた後は、ブラッシングまで30分以上経過するのが良い」と結論しています。
普通の歯は象牙質の上を硬いエナメル質が覆っています。論文では「露出した象牙質が強い酸にさらされた後」という実験なので、普通の人の、普通の食事には当てはまらないのがわかります。

歯磨きはいつやるの?

では、ブラッシングのタイミングとしては、いつが良いでしょうか?
食事中の歯の表面では、細菌が産生する酸による脱灰(大ざっぱに言うと歯の表面が溶け出すこと)と、唾液による再石灰化(大ざっぱに言うと溶け出した歯の成分が元に戻ること)が同時に起こっています。
食後30分くらいまでは再石灰化よりも脱灰のほうが大きく、歯の表面は溶け続けます。
酸を作る細菌の量をなるべく減らしてあげたほうが、脱灰の量も少なくてすみますから、
理想的には食前、食後両方のブラッシングが良いのですが、
現実的ではないので、食後なるべく早くブラッシングして、細菌を減らすのが良いです。

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